タイ、プミポン国王死去は旅人にどんな影響を与えるのか
多くの日本人も訪れるチェンマイの町から、北へ150キロ進んだ山間にある観光の町パイ。
10月13日のあの日、普段は欧米からの旅行者を中心に観光客で賑わうこの町から突然音楽が消えた。
ラーマ9世。70年の長きにわたり国王であったプミポン国王の死去が伝えられたためだった。
長くその地位についていただけではない。
国民に愛され続けたプミポン国王。その死に多くのタイ国民が涙にくれた。
- 国民に愛され続けたプミポン国王
- 観光業への影響は?
- 服装は?黒しか着れない?
- 酒が飲めなくなるのでは?
- 音楽は禁止?
- パーティーやコンサートなどのイベントごとは中止
- 観光地は通常通り営業
- 無料の炊き出しやサービスも?
- 安全上の問題が出てくる可能性も?
- 新国王はどんな人なのか
- 70年で初めての事
国民に愛され続けたプミポン国王
1946年に18歳で即位。世界でも稀な70年という長きにわたり国王であったプミポン王は、世界でも最長の在位期間を誇るだけでなく、国民に愛される王であった。
その敬愛のされ方ときたら、まるで父親のように国民からの尊敬を受けていたようだ。
国王がなくなる直前に旅人として現地入りをした人間としても、それは感じるところで、タクシーに乗れば運転手は宮殿の前で国王の健康を祈って手を合わすし、体調不良の話を聞いた20前後の女性が回復を祈る画像をフェイスブックやインスタにあげていたほどだった。
国王がなくなった 今となってはそれが顕著で、LineやSNSのプロフィール画像が喪に服していることを意味する黒になっている人も多い。
(パイのナイトマーケット。喪に服すことを示すための黒いシャツなどが特価販売されている)
観光業への影響は?
不謹慎な話かもしれないが、旅をするものとして気になるのは今回の国王の死去が旅人やタイの旅行業界にどの程度の影響を与えるのかということだった。
タイへの旅行を検討されておられた方にとっても、観光への影響については心配されるとこかと思う。
(バンコクのHua Lumpong駅前。国王の祭壇へ続く道は黒を着た人たちで埋め尽くされている)
タイにいて感じることであるが、タイは観光業、そして夜の産業で栄えている国だ。
30日。公務員など場合によっては1年も多くの国民が喪に服すとも言われており、これがこうした産業に与える影響というのは少なくないように思われていた。
しかし実際のところ 、現地で感じる限り旅行者にとって今回の影響はそれほど大きくない。一つずつお話ししていく。
服装は?黒しか着れない?
(黒い服が特価販売されていたパイのナイトマーケット)
旅行者である我々は特に服装に制限を受けることはない。
地元タイ人は黒を着ている人は多いが、これは外国人には適応されていないからだ。
ただお祝いを連想させるようなド派手な服を、これ見よがしに着るなどをすれば、地元の人々の感情を損ねることにはなりかねない。
節度を持った服装と行動をしていれば基本的には問題ないだろう。
酒が飲めなくなるのでは?
酒類の販売は国王がなくなった13日から17日にかけての三日間は、セブンイレブンなどの小売店から姿を消した。
しかしそれ以降はアルコール類の販売は通常通り行われており、影響は全く受けてはいない。
バーやレストランなどでのアルコールの販売は通常通り行われており、タイ人でも中には飲酒している人もいる。
音楽は禁止?
パイの街は白人の旅人や長期在住者が集う街で普段は音楽で溢れる街だ。
国王の崩御から数日。そんなパイの街から音楽が消えていた。
たくさんのクラブで溢れるカオサンも流されている音楽のボリュームも、国王がなくなってしばらくは音楽のボリュームを下げていた。
男性を対象とする歓楽街でも音量は下げての運営をしているようだった。
しかし規制は緩まってきているのも相まって、少しずつ店外に音が漏れる程度の音量には戻ってきている。あまり影響はないだろう。
ただし悲しみに暮れているせいか、摘発を恐れてかクラブなどに来る地元タイ人は若干減っているとの話はある。
とはいえライブミュージックや店内音楽が小さくなっていることを除けば、さほど影響はなさそうだ。
パーティーやコンサートなどのイベントごとは中止
12月現在はほぼ影響がない。懸念されていたランタンフェスティバルも通常通り行われていた。
少なくとも30日間の間、パーティーやコンサートなどは中止になっていた。
亡くなられてから一ヶ月と少しというギリギリの日程のため、実行が危ぶまれたランタン祭りも、実施、中止と二転、三転したが最終的には実施となった。
ただ同時開催されていた美人コンテストのようなイベントは、不謹慎という理由で実施されない、王室からの参加者もいないということで例年通りとはいかないようだ。
観光地は通常通り営業
20代の女性でさえ、王様がなくなったことで眠れないと漏らすほどタイは悲しみに包まれてはいた。しかし現実的なタイ人のこと。観光地や観光地でのツアーは今のところ通常通り行われている。
各地で行なわれているナイトマーケットや屋台街なども通常通り。ただし明け方までやっていることの多い屋台が、12時前に切り上げてしまうことも多かった。
彼らとしてもそれをしなかったら生活できないわけで、こうしたタイにおける普通の生活には問題ない。
ただしバンコクは街のあちこちに国王を悼むための祭壇が設けられている。
30日の期間が過ぎれば撤去されるものも幾つかあった。しかし昔のままの見た目と言うわけではない。
(宮殿周辺の国王の壁画と写真を撮る人々、黒い服を着た人が多い)
(国王の死から20日以上経った11月8日の昼間の光景、宮殿の周囲には国王の死を悼む人であふれ返している)
しかし国民感情を考えれば宮殿など周辺の祭壇は残される可能性あるため、見た目の上でしばらくは普段通りとは言えないこともあるだろう。
無料の炊き出しやサービスも?
現在バンコクの一部の地域では、無料の炊き出しや無料配布が行われている。
国民向けのサービスかと思いきや、外国人にも普通に配ってくれる。
中にはマッサージなどを無料でしてくれるところなどもあり、つらい時期を共に乗り越えようというタイの人々の繋がりを感じることができる。
安全上の問題が出てくる可能性も?
(ナイトマーケットに出現した軍人たち)
安全上の心配をする人もいる。
これまで クーデターが起きたり、勢力争いが起こっても平和を維持できたのはプミポン国王の存在が大きかったと言われていたからだ。
実際警戒レベルが下がる10月31日までに、現在の政治に不満を持つグループが行動を起こすのでは?という噂も現地では流れていたが、結局これは起こることはなかった。
駅などでは荷物のチェックなどは続いているが、一時期のような厳戒態勢モードではなく、緩くカバンをチェックして終わり。
タイ人らしい。形だけのチェックに終始している。
新国王はどんな人なのか
国王の崩御から1ヶ月経って、後継者であるワチラロンコン皇子が即位。
ワチランコン新国王はオーストラリアのキャンベラの軍学校を卒業後、タイ軍はもちろん、オーストラリア軍、英軍、アメリカ軍で訓練を受けたらしい。
戦闘機、民間機ともに操縦可能なパイロットで、皇太子時代の外遊では自分でボーイング737を操縦していたとも伝えられている。
一方で皇太子時代は公務に消極的であるとの批判を受けたり、私生活が分別がないとして批判を受けることが多かった。
即位式では44年間の間、王子としてプミポン国王の元で学んだことがことさらに強調されており、未だ前国王の存在は大きく、同じような役割を求められていることがわかる。
新国王にかかる期待は大きく、乗り越えるべき父親は偉大だ。
ここをどう乗り越えるかが今後の課題になるのだろう。
70年で初めての事
いずれにせよ、今回の件はタイにとっても70年間で初めての事であり、どんな事になるかが不透明な状況にある。しかし今の所大きな混乱は起きていない。
タイには日本企業も多く進出し、日本人の旅人も多い国だ。
しかし今回の件からはタイ人の繋がりの強さ、優しさと共にそれをリアル冷静に受け止めて乗り越えようとするしたたかさも見えてきた。
今の所、旅をする人、旅行で訪れる人には何の影響もない。
悲しみにくれるタイの人々は、それを逆に商売にして乗り越える強さも持っている。
新しい国王を迎えてタイがどうなっていくのか。今後を注目したい。